俺には何も無かった。

子供の頃から何一つ取り柄が無かった。両親からも言われたし自覚もしていた。勉強も運動も美術も音楽もぜーんぶ大嫌いだったよ。大概、バカでも一つくらいは何かあるもんだろうに俺には何も無かった。中学校へ行っても同じなんだけどギターを始めた。夢中だったけどやり方が全く解らない。そこでも自分には何も無い事に気づく。エレキギターをやりたいのに好きな音楽はニューロマンティクスだから登場回数が少ない。バンドらしきものでやってはみるけど凄い悲惨な状態だったな。楽しかったけどね。その頃から曲らしきものも作っていた。だって弾けないからね。大好きなエレキギターでさえろくすっぽ出来ない。皆、チューニングすら知らなかったからね。でも、まあ、そんなもんだろう。まだ、セックスピストルズにも出会っていない。友人はいたが俺には何も無かった。高校生になりたまたまレコード屋ピストルズの黄色のあのジャケットが目に入った。これはいい、いいに決まってる!!その時はお金が無く次の日に同じレコード屋へ行った。大雨だったけど関係無かったな。キチガイだと思われるだろうがオレハコレヲテニイレナケレバナラナイと真剣に思ってた。それで買った!!勝ったような気分だ。まだ内容もしらないのにね。そして高校入学祝いに買ってもらったビクターのコンポのプレイヤーにそのレコードをそっと乗せた。待つ事数秒。ドキドキが止まらない。で、ザッザッザッジャカジャーン!!!!!これだー!!!!と思ったよ。今まで何も無かった俺はパンクロッカーになった。15歳の春だね。田無(現西東京市)で数えるほどしかいなかったよ。