インタビュー2


今の俺のパンクロック

●パンクに関してはどうですか?
大槻「俺がやってたREGISTRATORSってバンドはまぁパンクで……20代だよね。それとは明らかに別物だけど、今、40歳手前でパンクっていうものを考えた時にコレかなっていうのがあって。『ROCK’N’ROLL RIDER』と銘打ってはいるけど、これが今の俺の出来るパンクロックかなって思うけどね」
●なるほど。
大槻「俺は今でもパンクってものを忘れてない、いや忘れてないっていうかパンクだと思ってるしっていうのがあるんだけど。やっぱそこはブレたくないなって。パンクとさっき言ったようなロックンロールスターってぜんぜん相反する感じもするかもしれないけど、やっぱりパンクは音楽としてもファッションとしても凄い好きだからね。SEDITIONARIESだけじゃなく違うパンクバンドのファッションにしてもそうだし。もちろんなんでもかんでもパンクだったら好きってわけじゃないけどね。なんか……ダサいじゃん、みんな」
●ははははは。
大槻「みんなとか言うと怒られるかもしれないけどさ。俺の言ってることとか音とかファッションみて笑うのもいいさ。でもダサくはねえぞ、おまえよりは!って思うよ。やっぱり『どうだ、羨ましいだろ! この野郎!』って思わせなきゃダメだしさ」
●個人的な話で恐縮ですけど、最近いろんなバンドみたり聴いたりして思うのは、あぁ、俺はパワーポップってぜんぜん好きじゃないんだなって。
大槻「あ、まったく一緒だね。いやポップな曲は好きよ。でも、今、パワー ポップってなに? ってなるとアメリカン・パワーポップパワーポップでしょ? そんなん聴かないんだよね俺は。だって、パンクって十分パワーポップだと思うし、イギリスのFIRST STEPSとか、あとSTARJETSとかをみんなパワーポップって呼ぶけど、俺からするとあれはパンクなわけ。だから、なんかアメリカンパワーポップみたいなのはレイドバックした感じがして刺激的じゃないよね」
●やっぱりこんな歳になっても『こんな風になりてえな!』って思えるような感じじゃなきゃ嫌なんですよ。
大槻「それでいて、“今”じゃないとダメだと思うんだよ。昔でも過去でもなくて“今”。やっぱり多くのバンドに対して感じるのは、なにかが遅いんだよね。なんだかドリフのコントみてるような気になってくるな。こうきたらこうくるみたいなのが読めるし。Bメロになったらマイナーになったり、イントロ →Aメロ→サビで、また大サビがくるみたいな。もういいよ!って思うんだよなぁ」
●さっきブレるブレないの話をしましたけど、SMALLSPEAKERはブレようがない気もしますね。ブレるとしたらなんでしょうね。
大槻「なんだろうね? 俺は現時点ではREGISTRATORSの再結成とかはありえないと思ってるんで、SMALLSPEAKERでは過去のREGISTRATORSの曲とか、当然 BRIGHTLINERの曲、そしてこれから作っていく曲とかを全てやっていこうと思ってて。総決算じゃないけど、まぁそんな風に思ってるね。要するにNEW ORDERが打ち込みとかいろんなことをやってもNEW ORDERであるように SMALLSPEAKERが打ち込みでやろうと生でやろうとなにをやってもSMALLSPEAKER はSMALLSPEAKERでしかないなってことにしたいよね」
●うーん……やっぱりブレようがないですねぇ。
大槻「そしたらなんだろうねぇ。日本語でやることくらいかな」
●まぁ、それもやりようですからね。日本語でやったほうが客にうけるだろうなって考えてやったのならブレるかもしれませんけど。
大槻「そうだね、自分が日本語でやりたくなったときはやりどきかもしれないけど。でも、俺はそういう風にずっとやってきてないから日本語で歌詞を作る才能がないと思うんだよね」
●これまで日本語で歌詞を書いてみようと思ったことは?
大槻「思わないね(キッパリ)。くだらないのが多い。やっぱりイメージってすごく大事でさ、聴いた時にどうともとれるようなものじゃないとダメって思うんだよ。だから説明過多なのはちょっとね。今、なんでもインフォメーションが多すぎるからさ。内容までインフォメーションかよ!って(笑)」

















パンク以前、パンク以後

●1stの時は本人より周りが語る方がおもしろい試みだと思って座談会をやりました。なのでBRIGHTLINERの解散からSMALLSPEAKERにいたる経緯を聞いてなかったんですけど、あらためてうかがいたいと思います。
大槻「これはもうあくまで俺サイドの意見なので、とうぜん他のメンバーとは 食い違うとは思うけど……後期くらいから作曲者が尊重されなくなったなぁっていうのがあって。それはもともと感じてたけど、それでもバンドがやりたかったってのがあってさ。作った曲が自分が思ったようなアレンジとは違うアレンジになっていったりもして。でも、やっぱりバンドってそういうもんだと思って、それでいいやって思ってたんだよね」
●はい。
大槻「ただ、なんか停滞感がいなめなかったのでアルバムでも作れば変わるだろうと思って録音を始めたんだけど。まぁ俺のディレクションにも問題があったかもしれないけど、ほかのメンバーと気にする点が違ったってのがあって。俺が 『そんなのどうでもいいじゃん』って思ってることを気にしてるメンバーがいたり、なかなか進まなかったりとか。そういう不満もむこうから出たし、だったらやめますという感じになってね」
●そっからたとえばメンバー集めて新バンドっていう方法もありますよね。でもそれはやらずに一人でやったってのは?
大槻「キツかったからかな……。いずれは一人でっていう考えもあったしね。いつかソロはやりたいって思ってたけど、それはもっと歳くってからできると思ってて。まぁ、それが早まっちゃったね」
●音楽をやる=バンド、バンドやる=ライヴをやるってのが主流の中で新鮮に思えました。いわゆる宅録や打ち込みの人とも違う、あくまでロックでパンクのままだし。
大槻「それに対するアンチテーゼはあったかな。だから1stはアンチテーゼのかたまりだったのかもしれない」
●それはなんとなく感じました。
大槻「1stには俺がいたんだけど、今回の2ndには俺があんまりいない感じがするんだよね。ここには俺の怨念みたいなのはあまりなくて、ただシステマチックにすすめていった結果みたいな。1st作ってからなんか憑き物が落ちたような、 すーっと抜けた感じがするね」
●かといって変にまるくなったわけでもないし、時代にバイクでつっこんでくる感じがしますね。エッジが立ってて。なんか低迷したり景気が悪い中でこの人一人だけが走ってんなぁって。あと、今回ジャケットもかなりかっこいいですね。
大槻「ジャケットはいいね! デザイナーの金野くんとはやっぱり長年いっしょにやってるだけあって、彼のことを信頼してるし最初のコンセプト作りをしっか決めたらあとはおまかせだからね。今回は音が先にできたんだけど、そのサウンドを聴いて彼がものすごく興奮して、それであのジャケットができたってのが俺にはとてもうれしいんだけど」
●いいパートナーですね。
大槻「まぁ、お互い吉川晃司好きだしね(笑)。あ、そういえば、今回、俺と同い年の吉川晃司好きの人が買ってくれたんだよ! オーダーメールの備考欄に『吉川晃司大好きです! SMALLSPEAKERやっと聴けます!』って書いててすごいうれしくてね。だけど、落胆しないでほしいなって思って(笑)」
●ははははは、過剰に吉川晃司的なものを求めてるかもしれませんしね。でも 同い歳だったら似た感覚の持ち主かもしれませんから。
大槻「俺は80年代がずっと青春時代でね。80年代の終わりから90年代はもうパンク一色だったけどさ、そういうパンクを知る以前のことってのが今回すごい重要で。パンク以前、パンク後の感じってのが今の俺の状態っていうか。中高生の時の感覚にもどっててね。それは今バンド編成で練習しててもそんな感じがする」
●自由になったんでしょうね。
大槻「うん、そうだね」
●先日、ちらっと練習のスタジオを盗み見しにいきましたけど、かなり楽しそうでしたし、かなりカッコよかったですね。
大槻「二人に助けられてるけどね」
●ベースはBACK TO BASICSのアベさん、ドラムはKEEN MONKEY WORKのマツオカ君ですね。SMALLSPEAKERはライヴのたびにメンバーが変わるくらいの自由さでいくと思ってたんですけど、なんかもう何年も一緒にバンドやってるようなバッチリ感を感じました。
大槻「もちろんKEEN MONKEY WORK とかBACK TO BASICSが忙しくなっちゃった らそっちに専念するだろうしね。でも、やっぱり人選まちがってなかったなって思うね」
●二人ともほんといいプレイヤーですね。
大槻「いいねえ! 最高だね! 二人に支えられてるってかんじ」
●楽しそうでいいですね。フレッシュで。
大槻「ギター熱が再燃しちゃったけどね(笑)」
●3枚目はバンド編成で作るんですよね?
大槻「曲ももうそろってるよ。今週の練習から新曲を少しづつやっていこうと思ってるね。実際にはバンド編成なんでソロみたいなスパンではリリースできないんと思うんだけど、3月4月くらいにはリリースできたらなと思ってるね」
●まったく減速しないですね(笑)。話題はずっとつきないし、動いてる感が持続してる。大槻「やっぱり2ndってセールス的には落ちるっていうのがあるけど、でも、そういうのは気にしてもしょうがねえなって。なんか淡々とやるしかねえなって思うんだよ。とにかく作って作って作れるうちは出しまくってやろうかと思ってね。枯渇するまでは」
●すごいなぁ。
大槻「枯渇しても、無理やりつくってやろうってね(笑)。そのくらいの気持ちでいるよ。俺はけっこうハードウェアに左右されるタイプなんで、使うハードによっても変わるのね。だから3rd以降はもうシンセサイザーとか入れてもいいかなって思うな、もう解禁かなと」
●4枚目以降のプランもあるんですよね?
大槻「4枚目のプランもあるけど、その前に俺が前にやってたバンドから SMALLSPEAKERの1st、2ndの曲もふくめて、バンド形態でのセルフカヴァーアルバムも作ろうかなって思ってる」
●おぉ、それは聴きたいですね! それにしてもアイデアやプランもつきないですね。スタジオに入って手ごたえがそうさせてるんですか?
大槻「そうだね! 楽しくやってるね」
●ライヴふくめ期待してます! では、最後に読んでる方にメッセージをお願いします!
大槻「1stで落胆したりとかした人は2nd買わないとかもあるかもしれないんだけど、やっぱりどっちも俺なんだよ。REGISTRATORSの時からいっつも違うことやってたしさ、だからよかったら聴いてねみたいなかんじかな」

終りました。ツネトオくん有り難う。楽しんでもらえると嬉しいです。

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