インタビュー。

今回は長いので2回に分けました。楽しんでくれると嬉しいです。


SMALL SPEAKER インタビュー


現実から目をそらすつもりはないが、
CDが売れないとかライヴに人が来ないとか、ロックは落ち目だとか、もううんざりだ。嘆いてばかり誰かのせいにしてばかりではこの停滞感は変わらない。
そんな中でものすごいスピードで一人で走ってる男がいる。それが大槻洋。それがSMALLSPEAKERだ。

BRIGHTLINER解散からSMALLSPEAKERになったと思えばすぐに1stをほぼ一人で制作 & リリース。その驚異的なスピードに驚いてる暇もなくもう2ndアルバムが世に放たれた。
タイトルは『ROCK’N’ROLL RIDER』。猛烈なスピードで時代に突っ込んでくる今の彼の姿にピッタリのタイトルじゃないか。
もしかしたら、ある種ベタでともすればハード過ぎな印象をもつ人がいるかもしれない。しかし一聴してもらえば、手垢のついて汚され続けてきたROCK’N’ROLLという言葉が、SMALLSPEAKERの手によってまた新たな輝きをもって加速していくのを感じとることができるであろう。

BRIGHTLINER時代からプレイされた曲からREGISTRATORS時代をも髣髴させるナンバー、意外にもRAMONESフレーバーを感じさせる曲までもが矢継早に畳み掛けてきては、あっ!という間に終わっちまう、まったくもって爽快極まりないアルバムだ。こんな音楽に出会えたことにいちロックファンとして感動しつつ、こいつがより多くの人に届くことを切に願う。

そんな新作の話はもちろん、BRIGHTLINER解散の真相、今後のプランなどを大槻洋に訊いてみた。



TEXT 恒遠 聖文








軸になってるのはダンスミュージック

●2ndの話に行く前にまず1stを振り返ってほしいのですが。
大槻「うん」
●振り返るって、4月に出ましたからまだそんなに経ってないんですけど(笑)。
大槻「はははは、そうだね。1stではやりたいことを……っていうより試してみたいことを全てブチこんだってのがあって。自分がもっている音楽の素養みたいなものをブチこんだって感じかな。それでけっこうすっきりした部分はあるね」
●元々BRIGHTLINERでアルバムを出す予定だったじゃないですか。それに入れる予定だった曲なり音なりアレンジなりを「本来はこういう形にしたかった」というのがあると思うんですが、を具現化した感じだったのですか?
大槻「いや、それはなくて。BRIGHTLINERでは決められたアレンジと俺のパートってものがあったから、ただそれを弾くだけで。だからあんな風に好き勝手にギターは弾けなかったと思うよ。そこの違いはデカいかな」
●そうでしたか。BRIGHTLINER時代にホントにやりたかったことが軸になってるのかと思いました。
大槻「というよりも“どうせ一人でやるなら”ってのがやっぱりあったかな BRIGHTLINERで録る予定だったものから一曲減らしたけど、ほぼ同じにしたってのはやっぱり意地もあったね。やってやるぜみたいなさ」
サウンド的には問題作と言われる内容でもありましたが……って言ってもこっちが勝手にそう言ってただけなんですけど(笑)。振り返ってみてどうでしょう。
大槻「やっぱり身体に直接くるっていうより、頭で……聴くっていう感じのものなのかなって。だからまぁ受け入れられないだろうなっていう人には当然のように受け入れられなかったし。でも当然それは折り込み済みでさ。もう嫌いになって結構ですってところで」
●んなこたぁ百も承知と。
大槻「なんであんな形で出したの? とかいろんなこと言う人いるけど、だったらてめぇでやってみろよって話で。バンドとは違うわけだから違うことやらないと面白くねえじゃん。だからあれはホントにソロみたいな感じだね。まったく全部自分一人でやってるわけで。まぁ、大沼には共同作業みたいな形で数回 手伝ってもらったけど、基本的には俺一人」
●先ほど「1stは体感的というよりも頭で」という話もでましたが、2ndはより体感的になってますね。
大槻「そうだね。リズムが ドン、パン、ドト、パン だとのれねぇなって思ってね。じゃあ、のれるビートってなにかな? って思った時に、みんなバスドラ4つ打ちとかで踊ってるじゃんって。テンポは違うんだけど昔のディスコとかもドン、パン、ドン、パンでしょ」
●そうですね。
大槻「ということは、ドン、パン、ドン、パンにしてハイハットを8分なり16分なりにする色付けだけでいいんじゃないかなって思って」
●それが功を奏してますね。すごくのれますよ。
大槻「後にバンド編成で演奏するってことを前提にした部分もあるからね。一聴するとパンクロックかもしれないけど軸になってるのはダンスミュージック。そういうダブルミーニングみたいにしてるんでね」
●なるほど!ロックの皮をかぶったダンスミュージックみたいな感じはあるかもしれません。曲間が短くて矢継早なところもそう考えると納得です。
大槻「1stを作ってる時点でもう2ndのコンセプト、曲順、録り方、使うリズムってのがほとんどすべて決まってて、それをノ—トに書きだしてあったんだよ。トラック数からなにから全部ね。で、最後に「ブレないこと!」っ て書いてあってね(笑)」
●はははは。
大槻「まぁ、もちろんそっから遊びの部分はあるけど、とにかくその青写真通り+αでやっていって」
サウンド的にはどんな青写真だったんですか?
大槻「まずトラック数を減らして、それからやっぱり俺の大好きリミッターサウンドね。コンプレッサーを使ったリミッターサウンドにしたいってのがとにかくあって。俺からすると今回のアルバムはそのリミッターサウンドとしてはかなり成功したと思ってる。まぁ成功させるようにもっていったんだけどね。あと それ以外はもう凄くシンプルだし、1stみたいなある種 難解な部分、例えばノイズギターが入ったりとかそういうのは一切やめようと思って。ほんとは好きなんだけどやめたね。全部自分でやったんでそういうジャッジは難しいとこなんだけど」
●今回は録音の途中経過を訊いても「どうろーねー」てかんじだったから、ほんとにどんなもんが出来るのかぜんぜん想像ができなくて。
大槻「地味かなぁ〜って」
●そう言ってましたけど、ぜんぜん地味じゃないですよ。ブログにも「シンプル過ぎてこれで良いのだろうか?と少し不安になってきた」「何のギミックも 無いからつまらなく感じる人はいるかもしれない」とか書いてましたけど、 まったくそんなこと思いませんけどね。すごくのれるし聴きやすい。なおかつ 刺激的で。
大槻「それはうれしいね。でも、やっぱりあの1stがないとこれはなかったんだろうなっていうのはあるかな」
●ギターソロとかものすごいかっこいいですよ。
大槻「ギターソロは全部おもいつきで。エフェクトもふくめてね。あとはベースがちょっとうまくなったかなとは思うね。意味ないんだけどさ(笑)」





ROCK’N’ROLL RIDER

●今回トータルコンセプトがすごくはっきりしてますね。ある種コンセプチュアルといってもいいくらい。
大槻「そうだね、そこもすでに決まってて」
●ほとんどの曲がバイクとロックンロールみたいな感じになってますが、いわゆるお約束のモッズ&ロッカーズみたいな世界とか“ハーレーと革ジャン”とは違いますよね。
大槻さんのそういうお決まりじゃないセンスにすごく憧れます。レザーにしてもJESUS & MARY CHAIN的というか……PRIMAL SCREAMが古い映画「VANISHING POINT」をモチーフにしつつも最先端のサウンドを作るようなものとも通じると思うんです。
大槻「俺も昔はVespaに乗ってたけどさ、まっピンクのVespaに SEDITIONARIES着て乗ってたりとかね。今は昔の国産の2ストロークに乗ってて、革ジャン着て乗ったりもするけど、もちろんLewis LeathersとかBELL STAFFも 好きだよ。でも、Lewis着て英車乗って……みたいなのってカッコ悪いって思うんだよね」
●こんなこと言うと怒られそうですけど、あるスタイルに忠実なファッションしてるがあまりに中身が変わってもわかんねえじゃんって人が多いと思うんですよ。そういうガチガチでキメキメの人がROCK’N’ROLL RIDERなんてアルバム作ったらけっこうキツイものがあるなって。
大槻「まぁ、そうかもね(笑)。俺の場合は日常でホントにバイクにガンガン乗ってるからね。ROCK’N’ROLL RIDERなんて陳腐な組み合わせだなぁ〜とも思うけどさ、俺のことをよく知ってる人からすればほんとにこいつはROCK’N’ROLL RIDERだなって思うだろうし、そこにウソとか物語みたいなのはないはずだからね」
●バイクとロックンロールは大槻さんの中では直結したものなんですか?
大槻「今回つなげちゃってたけど本来は別物だと思ってて、ただの趣味かな? さかのぼると俺のガキの頃は仮面ライダーが全盛でさ。俺は仮面ライダーライダーマンが好きだったんだけど、俺の乗ってるオートバイがライダーマンが乗ってるのと同じだって後から気づくわけで、すりこみってすげえなって」
ライダーマンが好きだってとこも大槻さんっぽいなぁ。そもそもバイクにひかれたきっかけはなんですか?
大槻「いややっぱりね、十代の頃ってどうしても車よりオートバイにひかれるんだよね。車の免許はもってるけど、あの“ある種の不便さ”にひかれてね」
●ある種の不便さ……
大槻「俺のはセルとかついてないからキックでエンジンをかけないといけないんだけど、なかなかかかんなかったりしてね。そういうある儀式をしないと稼働してくれないいもの、ある種の不便さってのがないとおもしろくないな」
●レコーディング機材もそうですか?
大槻「いや、それに関してはある程度スムーズにやってもらわないと困るんだけど。
ぁホントはまたテープで録ってみたいけどね。ただ、ヴィンテー ジ機材を集めてテープで録ってるガレージとかマージービート系のバンドとかは俺にはちょっとトゥーマッチな感じがしちゃうんだよね。やっぱ今にあったもので、今にアジャストさせたものでいきたいなって。それでいてちょっと古臭い音がでるようなものが俺は好きかな。だからホントのマニアからしたらこいつは違うよって言われるかもしれないけど」
●大槻さんってサングラスやブーツのチョイスひとつにしても、ギターのチョイスにしても代わりがきかないなって思うんですよ。
大槻「服とかはすごい気にしてはいるかな。ちょっと前のREATS TAILOR ZAZOU とか昔のUNDER COVER、あとMarc Jacobsなんかは好きだね。ここんとこそういう物欲が増えてたりしてまいっちゃうね。でも、全てにおいてある意味パーフェクトにやりたいなって。すげえお金がかかっちゃうんだけど(笑)」
●別に褒め殺しするつもりはないですけど、なんというか……隙がないですよね。
大槻「いやいや! 人間的には隙だらけだよ!!」
●いや、そこが隙がないってことなんですよ。これでなんか普段から安定してたらちょっとなぁって思いますよ(笑)。
大槻「ははははは」
●そこはつっこめる隙ですよ。SMALLSPEAKERの音楽は隙間が多いんですけど、 隙がないですね。先ほど「ブレない」って話しましたが、新しい機材かったり、新しい服かったり、新しい音楽を知ったらブレそうですよね。それに一人でやってたら尚更いくらでもブレれる。でも、今回ほんとに同じようなリズムで同じサウンドでシンプルで曲も短くて。
大槻「結果的に短くなっちゃったね。ギターソロとかも入ってるんだけどなんか短くなっちゃった。やっぱロックとかパンクって長くても4分じゃねえかなってのがあって。俺も過去には10分以上の曲とかもやってるんだけど、 そんなの聴かねえよなって思うんだよ。エゴじゃん。やる側がただやってみたいだけっていう。そういうエゴをすでに達成させたからってのもあるのかもしれないけど、やっぱりロックやパンクで一番かっこいい部分ってのは3分、4分 くらいで終わるのだよ。ポップスもそうだよね」
●そう思いますね。では、大槻さんにとってロックンロールとはなんでしょう。
大槻「大嫌いなものだね(キッパリ)」
●大嫌いなもの。
大槻「うん。それでいてようやく使えるようになった言葉。でも、俺が使うロックンロールって言葉は多分ほかの人とは違うんじゃないかなって、勝手に俺は解釈してる。そう響いてほしいなって。というのも、今、ロックンロールとかパンクとか言ってる人があまりよろしくないなって。そういうものが多いと感じてるしね。だからっていって“あえて使った”っていうのも嫌なんだけどさ。俺の思うロックンロール、俺がやるロックンロールはこれかなって」
●1stのタイトルにもロックンロールって入ってましたけど、たしかロックンロール三部作って言ってましたよね。
大槻「三枚作ったら、もう4枚目はロックンロールなんていいやって思ってるけどね。はははは」
●個人的にはスタイリッシュじゃないとロックンロールじゃないと思うんです。
大槻「パンクもおなじだよね」
●はい。でも、そうじゃないものが溢れてるんで、こういうものが聴けるとうれしいですよ。凄いスタイリッシュな感じがします。
大槻「そうかな? けっこう泥臭い感じもするんだけど」
●そうですかね。意図的な泥臭さとは真逆ですけどね。とにかく大半の人が言うロックンロールってものに違和感を感じますね。
大槻「まぁね、なんなんだろうなって思っちゃうね。でも、例えば言葉のあわせかたもあるんだろうけどね、デスクトップ・ロックンロールとかさ」
●大槻さんの使うソレはJESUS & MARY CHAINとかOASISが使うロックンロールに近いですね。
大槻「ああ、そうだね。MARY CHAINが『I Hate Rock'n'Roll』 とか『I Love Rock'n'Roll』とかいろいろつけてるじゃない。あとOASISの『Rock 'N' Roll Star』もね。俺、ほんとあの曲が大好きで。やっぱり『俺が東京一のロックンロールスターだぜ』って気分でやらないとなって。そんなことをリアムだかなんだか忘れたけど弟が言っててね。俺もその通りだと思うんだ。あれって多分ほんとにロックンロールスターになる前に作った曲だと思う からさ、そういう見栄のはりかたっていうか意地のはりかたってのは、ものすごく共感できるね」

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